2023/03/16 14:21

大型犬と股関節形成不全。

これも胃拡張、胃捻転と同じくらい気になるものです。

ジャーマンシェパードも遺伝的にこの疾患をもつ個体が多いです。
今は確か遺伝検査で問題のない個体しか繁殖に使えなかったと思いますが、それでも我が家のシェパードの股関節のはまりは浅めです。(レントゲン撮影により)
また、私がまだ幼少の頃、叔父の家で飼っていたグレートピレニーズもこの股関節形成不全を発症し、最終的に安楽死の処置をとられたと聞いています。もう30年ほど前の話です。

さて遺伝的なものは如何ともしがたいものですが、栄養学的なアプローチの研究も進んでいます。
一昔前は大型犬に対し、「カルシウム剤を添加する」「子犬の頃は食べるだけ食べさせる」というような考え方もありましたが、
それは逆に股関節形成不全のリスクを高めることがわかっています。

1.子犬の頃に早く大きくならせようと過剰なエネルギーを与えない
この研究をした際に股関節形成不全に関する調査もしており、
子犬の頃から理想的な体型を維持することで股関節形成不全の発症が減ることがわかっています。

A 食事制限なしのグループ
B Aより食事量を25%減らした食事制限グループ 

2歳時点での股関節形成不全の発症をみるとBのグループはAのグループに比べて発症率は50%少なく、認められた場合でも重症度が低かったそうです。
さらに変形性股関節症を発症する年齢が、Aグループは中央値が6歳であったのに対し、Bグループは12歳であったそうです。

何よりも太らせないことが大切で、それにより発症率や予後も大きく変わってきます。
上記のように子犬の頃に過度の栄養を摂取させることは股関節形成不全のリスクを高めることになります。

また、過度にエネルギーを与えることは急速な成長をサポートします。その結果、骨格や軟骨に異常をきたす可能性が高くなります。

ネスレ社によると、成長速度を制限したとしても、成犬時のサイズには影響がないそうです。
過度にエネルギーを与えることをせず、体型を維持し、緩やかな成長を促すことが、股関節形成不全の発症のリスクを軽減させます。

2.カルシウムの過剰摂取を避ける
これに関しては、子犬用、あるいは全年齢段階対応の総合栄養食を給与していれば問題になることはありませんが、しばしばカルシウムのサプリメントを添加する大型犬のオーナー様がいます。

骨が急激に成長するからという理由かと思いますが、これは全くの逆効果なのは今では有名な話かと思います。
高カルシウム食を摂取することで、骨の形成異常や関節の変形などが認められています。

また、カルシウムとリンのバランスも大切ですが、こちらもカルシウム同様、総合栄養食であれば基本的に整っているかと思います。

なお、以前は高タンパク食が影響を与えると言われていましたが、今では見直され、骨格の成長に影響しないとされています。


是非、大型犬、超大型犬のオーナー様におかれましては、愛犬を理想的な体型でキープし、
股関節形成不全のリスクを軽減してあげてほしいと思います。肥満はリスクしかありません。


【参照】
Hedhammer, A., Krook, F.W. et al. (l974)
・Hazewinkel HAW, Goedegebuure SA, Poulos PW (1985)
Hazewinkel, HAW, Van Den Brom, WE, Klooster, A. et al (1991)
Kealy, R. D., Olsson, S. E., Monti, K. L., Lawler, D. F., Biery, D. N., Helms, R. W., Lust, G., & Smith, G. K. (1992)
Nap RC, Hazewinkel HA, Voorhout G, et al (1991)
・Nap, R.C., Hazewinkel, H.A.W., Voorhout, G. et al (l993)
・Schoenmakers I, Hazewinkel HAW, Voorhout G, et al. (2000)
Smith, G. K., Paster, E. R., Powers, M. Y., Lawler, D. F., Biery, D. N., Shofer, F. S., McKelvie, P. J., & Kealy, R. D. (2006)