2022/03/22 12:55
「生肉は消化しやすい!」と色々なサイトで書き込みがされていますが、
さて実際はどうなのでしょうか?というお話です。
あくまで「生肉」「加熱した肉」の消化の違いのお話です。
結論から言いますと、適度な加熱によってタンパク質の高次構造が壊れることで
私たちが体内で作り出す消化酵素がより効きやすくすくなり、加熱によって消化はしやすくなるというのが答えになります。
実際に卵白を用いた実験があります。
加熱凝固した卵白の方が消化されやすいという内容です。
また、別の実験結果もあり、鶏肉、牛肉、鯛、クジラ肉、烏賊の生と加熱の消化の違いを調べたものがあります。
「食肉の消化率に及ぼす加熱の影響~ペプシン~(pdfファイル)」
「食肉の消化率に及ぼす加熱の影響~パンクレアチン~(pdfファイル)」
パンクレラチンは複合消化酵素で犬にも処方されることがあり、
「膵液中に含まれるプロテアーゼ、膵臓アミラーゼ、リパーゼ、トリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチターゼ、リボヌクレアーゼ、その他多くの消化酵素を含有し、中性~弱アルカリ性で活性を示し、でんぷん、蛋白質及び脂肪を消化する。 」
※パンクレアチン「ホエイ」 - 医薬品医療機器情報提供ホームページより抜粋、引用
食肉の消化率に及ぼす加熱の影響~ペプシン~から結果を抜粋、引用しますと
「加熱によりペプシンでの消化は
烏賊、鯛⇒消化率低下
鶏、牛、クジラ⇒ほぼ不変
加熱によりパンクレアチンでの消化は
烏賊、鯛⇒消化率低下
鶏、牛、クジラ⇒消化率上昇」
魚類に関しては加熱すると総じて消化率が低下するという結果です。
これに関しては非常に興味深く、他にデータを探したもののちょっと今いま直ぐは見当たらずですみません。
「調理加工食肉・食肉製品の消化酵素処理による生理機能発現(pdfファイル)」
こちらでも本文より抜粋引用です。
「SDS-PAGE分析により、対照の生豚ロース肉に比較して各種加熱処理をした豚ロース肉の方が、
処理により分解されやすいことが判明した。これは、未変性タンパク質に比べ、変性タンパク質は容易に酵素分解されたためと考えられた。」
基本的には「生肉」よりも「加熱した肉」の方が消化はしやすくなります。
これは加熱によりタンパク質が変性することで消化酵素がより作用しやすくなるためです。
また、加熱した場合は素材によっては縮みますので「量」はたくさん摂取することができます。
野菜はイメージしやすいですよね。
生で食べた時に食べられる量と加熱した時に食べられる量を比較した時に
最終的に摂取した栄養量がどうなるのかと思ったりもします。
加熱により食品の「酵素」が無くなるというお話はまた別の機会に。
これに関しては「消化」の仕組を理解すれば惑わされることはなくなります。
さらに調べますと、魚肉と畜肉では筋繊維などの組成が異なり、魚肉は室温でも構造が壊れ凝固を始めるそうです。
それを知ると魚が加熱することで消化率が下がるのはなるほどなと思う所です。
ただ、加熱で消化率は下がるとは言いましても畜肉と比べると魚肉の方が消化はしやすいので、
加熱した状態の魚肉と生の畜肉の消化率の差はまた気になるところですね。